こちらはvol.4の続きです。
マッチングした人とのドキドキ電話
マッチングアプリでマッチングした人。
この人とは話が弾み、今までの人と比べると価値観も合いそうだった。
優しくて誠実そうで仕事も真面目にされていて、居住地は少し遠いけど一度会ってみてもいいかもしれないな。
LINEも交換し、アプリ内でのメッセージのやりとりの時よりも親密になった。
数日やりとりをしたある日、会ってみませんか?と誘われ、その前に一度電話で話したいと言われた。
この時少し迷った。
私は電話が死ぬほど苦手なのだ。
正直嫌だけど「何事も経験だ!前に進まないことには何も変わらない」と、ものは試しと思って電話をしてみることにした。
もしこの電話で気が合わないことがわかればデートをキャンセルすることもできる。
ということで夜に自室で電話をすることにした。
すごく緊張した。
ただでさえ電話が苦手なのに知らない相手と話すなんて。
しかも異性だ。
他の部屋には家族もいるのでドキドキだった。
でもこの試練を超えなければ先には行けない!これから先、誰かと会ってデートをして…を経験していくのだ。
ここでひるんでいてはダメだと自分を奮い立たせた。
まるで戦いにでも臨むかのような心境だった。
そして電話がかかってきた。
どうやら相手は仕事帰りで車の中から電話をしているようだった。
名前は仮にAさんとする。
Aさんは私が予想していたより声が高かった。
お互い緊張していただろう。
「こんばんは、初めまして。初めてじゃないですけど笑」というようなお決まりの挨拶から始まった。
電話は予想していたより長かった。
少しだけ話して終わるろうと思っていたが、なかなかAさんは話を切り上げてくれず、なんだか長くなってしまったので徐々に焦り始めた。
もう切ってもいいだろうか。
用は終わったんじゃないだろうか。
こちらから切り上げても良いのだろうか。
この人に対してはまだ“好き”と言う感情が芽生えてなかったので、長く繋がっていたいという気持ちは全くなかった。
それよりも早く解放されたかった。
だが相手は次から次へと話題を振り、どうやらもう少し電話で話していたいようだった。
私はもう途中から、どう言って電話を切り上げるか?しか考えていなかった。
とにかく電話がイヤすぎた。
電話じゃなくて手紙ならいいのにな。
その後まだしばらく話は続き、なんとか長電話は終わった。
でも電話から伝わってくる雰囲気を考えると相性はそこまで悪くないように思えたので、とりあえず一度実際に会うことにした。
Aさんと初めてのご対面
今回は前回と違ってあらかじめ相手の顔はわかっていた。
これは私にとっては大きな安心材料の1つだ。
Aさんは私が住んでいるところからは少し遠いところに住んでいたが、私の住む街の駅まで来てくれた。
今日は軽くお茶をして、その後すぐ解散しよう。
私の頭の中の計画はこれだった。
初めて会った人と長時間過ごすのは体力的にも精神的にもかなり疲れる。
それに相手のことをまだ好きなわけではない。
今回は、どんな相手なのかを知る時間だと考えていたので早めに切り上げたかった。
駅前広場で11時に待ち合わせ。
この待ち合わせ時間までが本当に地獄。
吐きそうなくらい緊張して、手は震えるわ下まぶたは痙攣するわトイレは近くなるわ。
喉も乾くし、早くこの時間よ過ぎ去ってくれと願っていた。
駅前広場を見渡してみる。
もしかしてこの中の何人かは私と同じようにアプリで出会って、今日が初めての待ち合わせという人もいるのかな。
そこにいる男女がみんなマッチングアプリの待ち合わせであるかのように思えてくる。
みんな私と同じようにドキドキしてるのかな。
相手も駅に着いたようだ。
自分の服装をお互い伝え合い、待ち合わせ場所で相手を探す。
すぐに写真と同じ容貌の相手が見つかった。
プロフィール画像と変わらないし、むしろ実物よりもよかった。
前回の件があったので、この点でとても安心した。
身長は低かったが私よりは高かった。
私が低身長なので相手が低くても高く思える。
会ってしばらくは緊張しまくっていたが、緊張してない風を装って会話を進めていった。
どこかでご飯食べましょうということになり、近くのカフェへとブラブラ歩いて行くことに。
当時の私は胃腸障害があり、食事量が極端に少なく食べられない物も多かった。
そのため誰かとの食事はとても大きな不安要素であり、恐怖でもあった。
おかしいと思われるだろうな。
理解してもらえないだろうな。
気を使わせてしまうと悪いな。
だが私は病気になった時から、ありのままの自分を表に出して生きていくと心に決めていた。
これはマッチングアプリでもそう。
「私はあまり食べられないけど気にしないでください」とあらかじめ伝え、小さなサラダを注文。相手は普通のランチだった。
私は今の私に嘘をつくことはできない。
もうしたくない。
これまでの人生で自分に嘘をつき尽くした。
先に伝えるのは私なりの礼儀で、相手のためでもあり私のためでもある。
相手に、私は大丈夫なのだと勘違いをさせてしまうとお互い辛くなる。
案の定小さなサラダでさえ全部食べることができず、箸をつけていない残りのサラダを初対面の相手に食べてもらうという事態になった。
でもこの頃の私は『無理をしないこと』『ありのままでいること』『他人に頼ってみること』を心がけていたため、あまり抵抗を感じなかった。
こんな傍若無人で非常識な私を、Aさんは引くことなく受け入れてくれた。
なんで優しい人だ。
私の体調や性格を受け入れられないと感じる人であればここでも終わるだろうし、こんな私でも受け止めてくれる人であればこれから先も続けることができるだろう。
判断基準にもなるのでありのままの自分を出すことは本当に大事だと思う。
恥ずかしがらずにどんどん自分を出していこう。
これはただ恋愛相手を見つけるための機会ではなく、私が私であるための実践の機会。
そう思うと緊張も恐怖もどこかへ飛んでいった。
相手に好かれようとしない、自分をよく見せようとしない、無理をしない、自分を大切にする。
それを心に決めてこの時間を過ごしていた。
もはや私にとってはAさんとのデートではなく、私と私のデートだった。
私を喜ばせてあげる、楽しませてあげるためのデート。
私にとっては恋愛よりも本当の自分でいることの方がはるかに大事だった。
本当の自分でいることができれば、いつか必ず自分にぴったりの相手に出会うことができると確信していたから。
そんなふうに自分らしく振る舞っていたが、相手は気にせずこの時間を楽しんでくれていた。
笑顔が多く柔らかい印象の人だ。
だがこんなに優しいAさんにもただ1つ、どうしても気になる点があった。
それは、元カノの話が多いことだった。
どこまで出てくる元カノさん
折に触れて元カノの話が出てくるのだ。
さらにはデート中に元カノから長い電話がかかってきた。
私は確かに恋愛経験がほぼゼロだ。
恋愛においてはかなりの未熟者だろう。
でもそんな私でもこれはさすがにおかしいのでは?と思い始めた。
元カノの話が出てくること自体はおかしいことではないが、こうも度々話に出すものなのだろうか。
ましてや今は、これから恋人同士になる可能性のある相手とのデート中。
どうやら元カノは情緒不安定らしく、いまだAさんに執着しているようだった。
今でも電話口で愚痴や文句を延々と聞かされたりするらしい。
お互いのことを知る時間であるはずの今回のデート。
その最中に元カノの性格や元カノとどんな生活を送ってきたかなどを聞かされ、挙げ句の果てには、
「私とその元カノは話が合うんじゃないかな。友達になれるかも。いつか会って話をしてみて。」
とまで言い出した。
もはやAさん、元カノ、私の3人でデートしているような気分だった。
今でも延々と続く元カノからの電話を断れないAさん。
たしかにAさんは優しい。
だが相手のためを思ってキッパリと断ることも優しさではないか。
それができないAさんこそ元カノに執着しているのだろう。
この人と付き合ったらもれなくこの元カノはついてくる。
その先には間違いなく修羅場が待っている。
私の求めている恋愛はここにはなさそうだ。
元カノの話が頻出する時点で、この人とは付き合うことはないだろうと答えを出していた。
私の想定通り、デートは早めに切り上げることができそうだった。
Aさんはまだ私と一緒にいたいとのことで、車で家まで送ってくれると言い出した。
まだそんなに仲良くなっていないので住所を知られるのは抵抗があり、最寄り駅まで送ってもらうことにした。
はたして初めて会った人の車に乗っても良いものなのだろうか?
警戒心なさすぎるのかな。
他の人はどうしてるのかな。
一瞬気にはなったが、そんなことはどうでもいい。
私は疲れていた。
早く帰って休みたい。
ラッキー♪と考え、お言葉に甘えて乗せてもらうことにした。
こうして私はミッションを終えた。
今日の自分にとても満足した。
心身が疲れ果てていたが1歩前に進むことができて嬉しかった。
Aさんは私を気に入ってくれたようで、律儀にもデート後すぐにLINEが来た。
そしてまた次も会おうと誘ってくれた。
私に対してとても好意を向けてくれているのはデート中でも明らかだった。
デート前の電話からもそれがひしひしと伝わってきていた。
だがここで一つの問題が発生した。
恋愛以前の私の問題
実は私は昔から、相手から好意を向けられると逃げだしたくなる衝動に駆られるのだ。
たとえそれが片思いしていた相手であったとしても。
好意が自分に向けられた途端になぜか嫌悪感を感じてしまう。
これは昔から悩んでいたこと。
原因も克服法もわからない。
過去のトラウマだったり過去の経験が原因となっているわけではなく、これまでの人生を振り返っても思い当たることが何もなかった。
だから厄介だった。
こんな状態なら恋人を作ることなどできないのではないかと悩みの種だった。
それが今回もまた発動したのだ。
Aさんは本当にいい人だった。
優しいし動植物も好きだし私のことを大切にしてくれそうだと感じた。
元カノの話にはちょっとびっくりしたが、そのこととは関係なく例の好意に対する嫌悪感のほうが勝った。
この嫌悪感を感じたまま付き合っていく事は無理だろう。
ということで相手には断りの連絡を入れた。
もちろん嫌悪感のことは伝えずに。
あの人はきっともっと相性の良い女性を見つけて幸せになることができるだろう。
それぐらい誠実で優しい人だった。
もしかしたら元カノとよりを戻すかもしれないけど。
Aさんとの関係が終わり、肩の荷が下りてとてもすっきりした自分がいた。
あれ、私この人とやりとりってストレスだったのかなぁ?
でも頑張ったし良い経験をさせてもらえた。
こうしてマッチングアプリで初めての相手とのデートが終わった。