【vol.3】36才無職、病気を抱えながら初めての恋人と結婚した話【人生初のデート編】

こちらはvol.2の続きです。

目次

記念すべき人生初のデート

日常で出会いの機会がないなら自分で作ってしまえ。

私はSNSを活用することにした。

このときの私は闘病中で無職の35歳。
交際経験ゼロで異性との肉体関係も持ったことがない。


ご飯もほとんど食べられないし、長時間座っていたり外を出歩くことも容易ではなかった。

今思い返してみてもこの状態でよく踏み出すことができたなぁと、あの時の自分に感心する。

当時の私を行動に駆り立てていたのは純粋な好奇心だった。

ただただ知りたかった。

恋人と愛し合うとどんな気持ちになるのかを。

私でも大丈夫だろうかという不安はゼロではなかった。

でもその不安よりも、私がまだ知らない世界を体験してみたい、好奇心を満たしたいという気持ちの方が強かった。

生まれてきたのなら、死ぬときに後悔しないようにやってみたい事はやっておこう。

病気のおかげで私は後悔しない生き方を意識するようになった。

行動すればきっと何かが変わるはず。


私はまず、あるアプリ(マッチングアプリではない)を使って男性と会ってみることにした。

いろいろ聞かれたり止められたりするのも嫌だったので家族には秘密にしていた。

こそこそとやりとりを重ね、顔も知らない相手に惹かれてもいた。

恋愛経験ほぼゼロの私はいとも簡単にときめいてしまう。

そして初めてのデートの日。

数日前から緊張していてよく眠れず、当日も体調が思わしくなかった。
それでも私は1歩でもいいから進みたかった。

これまでと同じことをしていれば同じ毎日が続くだけ。

新しい世界を知りたいのなら勇気を出して枠から出てみなければ。

ここで会うのをやめてしまうと何も変わらないことだけはわかっていたので、体調が多少不安でも行くという選択肢しかなかった。

そんな思いを抱えついに待ち合わせ場所へ…

ドキドキの対面

そこには相手の男性らしき人がいた。


その人を目にした瞬間、即座に「帰りたい」と思った。
人違いだと思いたかった。

いやいや嘘でしょ。

初めて会うのに鼻毛出てるんですけど…

髪はボサボサ、着ている服も毛玉だらけでどう見ても近所のコンビニスタイル。もしかしたらこの人のおしゃれ着なのかもしれないが…

先ほどあれほどまで覚悟していたのにも関わらず、私の頭の中では「なんとかして帰りたい。体調悪いからと言ってキャンセルする?言うなら今しかないのでは?でも相手に悪いよね、どうしよう」との思いがグルグルと高速で駆け巡っていた。

逡巡している間にコンビニでお茶の会計を済ませ、

そこにいた男性は私の想像とは程遠く、文面だけを見てほんのりとときめいていた私の夢はもろくも崩れ去っていった。

そして衝撃の事実が発覚。

今思えばファミリーカーで迎えに来ていた時点でおかしかったのだ。

その人はなんと子供が6人もいた。


離婚していたので独身ではあったが、子供がいたなんて一言も聞いていなかった。
しかも今は結婚する気はないと、さも当然のように言い放った。

彼のカミングアウトを「それもありですよね〜」などとさも物分かりのいい人かのように平静を装って聞いていた。

子供がいるとか離婚歴があるとかそんなことではなく、それを先に告げてくれていなかったことに対して苛立ちを覚えていた。

ただ単に遊び相手を探していただけの下心満載のおじさんだったのだ。

それを見抜くことができなかった経験値の少ない自分にも腹が立った。


もっと最初に聞くべきことを聞いていれば無駄にときめくこともなかったし、今日会うこともなくこうやって苦行のような時間を過ごすこともなかったのに。

メッセージのやりとりだけで恋愛を楽しんでいたつもりの自分が哀れに思えてきた。

転んでもただでは起きない

でもここで当初の目的を思い出した。

“恋愛を知りたい”の他に、“新しい世界を知る”と言う目的もあったということを。

私は頭を切り替え、これも人生経験、人間・交流というものを学ぶための課外授業なのだと思うことにした。

全ての時間を無駄にするもんか。

今回は失敗であるかのように思えるかもしれないが、学びという点では大成功なのだ。


うまくいかないことも立派な学び。

この人との時間を利用させてもらって勉強することにした。

ところで周りから見ると私たち2人は恋人に見えてるのだろうか。

どう見ても恋人ではなく親子にしか見えないのではないか。もしくは叔父と姪。

うん、叔父と姪がしっくりくる。

私とこの人は恋人同士じゃないんです、恋愛関係でもありません。

と、どうか恋人同士に見えないでくれと切に願った。

違和感と不快感が拭い去れない時間をなんとかやり過ごす。

できるだけ意識を別のところへ向けよう…

水族館へ行ったり食事をしたり、一応デートらしきことを無事クリアしていった。

うんうん、私だってデートできるではないか!

ちょっと誇らしくなった。


途中から気づいたが、この人はやたらと距離が近く事あるごとに触れてくる。

水族館の記念写真を取りたがり、断ることが苦手な私は承諾してしまい、肩を抱かれて撮るハメになってしまった。

耐えろ、耐えるんだ私…

こういう記念写真は無料版であれば本当に小さな写真しかもらえない。有料版の普通サイズの写真は断固拒否することができた。

まさかの、初めての頭ポンポンまでこの人で経験することになってしまった。

期待していたようなキラキラドキドキの初デートとはまるで違う。

流されやすい自分が本当に恨めしい。

これはもう笑い話にするしかないなと強がりつつ、帰路につきながら今日気づいたことや学んだことを振り返る。

大事なことは、子供がいるとか離婚歴があるとかではなく…

まず清潔感だな、と。

終始鼻毛に注目してしまっていた私であった。

初めてのデート。

初めての男性との2人きりの食事。

それがこんな思い出になるとは。

苦い。苦すぎる思い出だ。

当日のメッセージで次のデートのお誘いもあったが丁重にお断りした。

謝りつつ誠実に、もう会うつもりはないという旨を伝え、彼にもわかってもらえたと思って安心した矢先、

「疲れちゃったんだね。またしばらくしたら会おう♪」と軽〜い調子でメッセージがきた時には軽く戦慄を覚えた。

うわぁこの人全然話聞いてない。

話が通じないという恐怖。

当然、もう会うことはなかった。

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